陸上競技 トレーニング

400mの選手が辛い走り込みをする意味

投稿日:2017年4月5日

前回乳酸を溜める練習だけではそのうちタイムが頭打ちするということを書きました。
今回はその原因について書いていこうと思います。

 

結論から言って一番の原因はスピードです。
最高速度が向上していない、もしくは低下してしまっていることが原因です。
400m走はスピード持久力の競技ですが、スピード持久力というのは読んで字の如くスピードを持続する能力です。
つまりスピードがあることが大前提の要素なのです。
極端な話、ジョギングであればスタートからゴールまで一切減速することなく走り切ることが出来ますが、それではダントツの最下位です。
高いスピードを維持する力が必要なのです。
維持すべきスピードそのものが低下してしまうと持久力を高めたとしてもトータルではマイナスになるということが起こります。

 

前回書いた乳酸を溜める練習、いわゆるケツワレ練習は乳酸に対する耐性を高めることができますが、最高速度を出すような練習ではありませんのでトップスピードは向上しません。
それどころか80%程度のスピードしか出していないといつしか80%しか出せない身体になってしまい最高速度は低下します。

 

もうひとつ、乳酸耐性能力自体が頭打ちするということです。
練習頻度にもよりますが、大体2~3ヶ月程続けると個人の能力の上限近くまで高まります。
やればやるほど乳酸に対する耐性が向上していくわけではありません。
器にいっぱい水を張った状態でさらに水を注ぐようなものです。
器の大きさには個人差がありますが、皆大きさには限界があります。どこまでも無限に大きくなっていくわけではありません。
どんなに辛いケツワレ練習を繰り返しても400mを減速せずに走りきれるようにはなりません。
世界トップレベルの選手たちでさえ後半は大きく減速しています。

 

持久力が頭打ちする中でスピード持久力を向上させなければならないのであれば、やはりスピードが鍵を握るということになります。
ちなみに400m世界記録保持者であるバンニーケルク選手の100mのベストタイムは9秒98で現時点で日本記録より速いです。
前世界記録保持者のマイケルジョンソン氏も100mのベストタイムは10秒0台、つまり日本の100mのエースである桐生選手や山縣選手と同じぐらいで走っているのです。
日本記録保持者の高野進氏も全盛期はスタートダッシュの練習で100mの選手相手でも負けなかったという話を聞いたことがあります。

 

では乳酸耐性能力が上限まで達した後のケツワレ練習は辛いだけで意味がないのか?
確かに生理学的には効果が薄いかもしれません。
しかし「辛い練習に耐えた」「限界まで追い込んだ」という経験はレースに臨む際に大きな心の支えとなります。
400mは苦しいと分かっていながら前半から突っ込んでいかないと自己ベストは狙えません。
不安を抱えて後ろ向きな気持ちで望んだレースではなかなかスピードに乗れないものです。
ケツワレ練習で記録が大きく向上した選手の中には、生理学的な要因より心理的な要因(もしくはその両方で)で速くなったパターンもあると思われます。
乳酸耐性の向上により後半の減速が抑えられてタイムが向上している選手もいれば、辛い練習を乗り越えたことで心理的なストッパーが外れて本来の力を出し切れるようになった選手もいるということです。
しかしメンタル面とフィジカル面を合わせてのパフォーマンスであるため、どちらの貢献度が高かったのかを量り知ることは難しいでしょう。
しかしどちらにせよケツワレ練習が記録を向上させたと言えます。

 

乳酸耐性能力が頭打ちした後のケツワレ練習はメンタルを鍛えるという意味合いが強いと思います。しかしメンタルがパフォーマンスに多少でも影響を与えるので無意味ではないと言えるでしょう。

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