1998年に伊東浩司選手が10秒00をマークし、日本人初の9秒台が期待されてから早20年。出そうでなかなか出ない9秒台ですが昨年あたりから10秒0~1台の記録が連発され、いよいよ現実味を帯びてきました。今回は今年100m9秒台を達成する可能性が高い選手を挙げてみます。
抜群のスタートダッシュが武器の先行逃げ切りタイプです。かと言って後半が弱いわけではありません。無駄を極限まで削ぎ落とした端正なフォームで最後までスピードを維持します。無駄の無い効率的なフォームで走れているため100mの選手でありながらマイルリレーで400mを走っても好走しました。オリンピックのような大舞台でも常に自己ベスト近いパフォーマンスが発揮できる勝負強さも魅力です。昨年から今年の春先にかけて10秒0台を連発しており個人的には日本人選手の中で最も9秒台に近いのではないかと思います。欠点を挙げるとすれば怪我が多いということでしょうか。腰痛などで長期離脱していた時期もあります。あとは欠点ではなく長所なのですがスタートの反応速度が良すぎて、そのうち0.1秒をきってしまう(0.1以下は号砲の後であってもフライング)のではないかという心配もあります(笑)
言わずと知れた現役日本最速の選手。高校生で10秒01をマークした怪物です。武器は最高速度の高さです。トップスピードだけなら9秒台の選手と互角のレベルに達しています。スタートも年々改善されているように感じます。欠点を挙げるとすれば、大舞台のレースや競り合いの局面で硬くなってしまう傾向があるということです。硬くなった時は目で見てわかるほど力が上に逃げてしまうような走りになってしまいます。逆にぶっちぎりの展開になると手がつけられない強さを発揮します。昨年は学生の試合で流して10秒01をマークしました。プレッシャーのかからないような規模の小さい試合(の準決勝あたり)であっさり9秒台を出してしまうのではないかと思います。そして1度出してしまえば記録のプレッシャーから開放されて1段階上の強さを手に入れるんじゃないかと期待しています。現在の能力で言えば日本人トップだと思います。
ジャマイカ人とのハーフで後半の伸びが武器の選手です。昨年の日本選手権では先行する山縣選手と桐生選手をゴール手前でかわし優勝を飾りました。学生時代は線が細く怪我が多い印象でしたが、肉体改造でパワーアップし飛躍しました。オリンピックでは個人で予選突破、リレーではアンカーで世界のトップレベルの選手を振り切り2位を守りきったことから勝負強さもある選手です。
陸上選手の母とガーナ人の父を持ち、2015年の世界ユースではウサイン・ボルトの持っていた大会記録を破って優勝しました。同年の世界陸上にも200mに出場し、準決勝まで進出しました。この時若干16歳、驚きです。荒削りなフォームで効率が良い走りには見えませんが200mの後半までスピードを維持する力があり、ポテンシャルの高さを感じます。オリンピックイヤーは残念ながら怪我で活躍できませんでしたが、フロリダ大学に入学して早々自己ベストを更新するなど好調です。記録だけ見ると9秒台は少し遠いように感じますが、年齢的にも技術的にも大きな伸び代を残しての記録なので、底知れぬ潜在能力に期待せずにはいられません。
以上4選手を挙げてみました。毎年期待が高まる9秒台、今年こそ達成されてほしいですね。そして東京五輪ではリレーメンバー全員9秒台で金メダルを獲得してほしいです。