本当に楽しみすぎて1日が長かったです。史上最高レベルの日本選手権100m決勝です。もはや風の力を借りなくても9秒台が出そうな予感でしたが・・・直前になって激しい雨。残念です。優勝タイムは10秒1台と予想。
雨がもたらす影響について簡単に説明しますと、選手の身体が冷えてパフォーマンスが低下する、怪我のリスクが高まるという事がありますが、もうひとつ重要な事がトラックの反発力が低下するということです。濡れたトラックと乾いたトラックに同じ高さから砲丸を落下させると乾いたトラックのほうが高く跳ね上がります。つまりトラックは乾いた状態の方が良く弾むということです。雨が降ると全体的に記録が低調になるのはそのためです。それでも風の影響に比べれば微々たるものですが、記録を狙う上で雨が良い影響をもたらすことは無いでしょう。記録には悪影響ですが、勝負に関しては皆条件は同じですので結局強い者が勝ちます。
記録への期待がやや薄くなってしまいましたが勝負の面白さに変わりはありません。決勝に出場する選手達を見たときに「9秒台は出なくてもいいから怪我人が出ずに無事終わってほしい」という気持ちも湧いてきました。銀メダルを獲得した昨年を超える史上最高のメンバーでリレーを組んで欲しいと思いました。
静寂の後に号砲。一番良い飛び出しを見せたのは桐生選手でした。ロケットスタートの多田選手より前に出たのは予想外でした。このまま得意の中盤に繋げれば・・・しかし加速力は多田選手が勝り先頭に立ちます。サニブラウン選手とケンブリッジ選手がそれを追う展開。60m付近でサニブラウン選手が多田選手を逆転、桐生選手は伸びてきません。そのままサニブラウン選手が差を広げてゴール。雨の中自己ベストを更新する10秒05(大会タイ記録)。多田選手はケンブリッジ選手の猛追をかわし2着を守り、ケンブリッジ選手が3着に入りました。桐生選手は飛び出しこそ良かったものの伸びを欠き4位に沈みました。
決勝レースは良くも悪くも4選手の特徴が出たレースとなりました。優勝したサニブラウン選手はスタートで躓き、少しバランスを崩しましたが落ち着いて得意な後半勝負で逆転しました。雨の中、ミスがあっても10秒05はすごいです。9秒台が出てもおかしくないレースでした。2位の多田選手は持ち味の前半でしっかりリードを奪いました。そして課題の後半は固くならず走りきれたことでケンブリッジ選手の逆転を許しませんでした。ケンブリッジ選手は予選・準決勝の調子からすると物足りない感じはありましたが、持ち味の後半でしっかり代表の座を確保する勝負強さを見せました。桐生選手は競り合いの弱さを露呈してしまい得意の中盤が伸びず個人での代表を逃してしまいました。飛び出しが良かっただけに残念です。あの飛び出しで得意の中盤に繋がっていれば一気に抜け出してもおかしくなかったのですが本来の走りではありませんでした。「速い者が勝つのではない、強い者が勝つ」陸上界ではよく聞く言葉ですが正にその通りになりましたね。