足首を傷めて日本選手権は惨敗だった山縣選手が全日本実業団の100m決勝で10秒00(+0.2)をマークして優勝しました。
先日桐生選手が9秒98をマークした際は追風1.8mでしたので単純比較はできないと言え、同じ風が吹いていれば9秒8台が出ていたかもしれないという衝撃の走りでした。世界選手権の代表から漏れ、日本人初の9秒台も出せなかった彼の復活劇は桐生選手以上に感動しました。
夏場のレースで徐々に復調している感じはありましたが、それでも本調子とは言えないレースが続いていたので桐生選手の9秒台同様驚きました。スタートこそ爆発的な飛び出しではありませんでしたが滑らかに加速でリードすると後は後続との差が開く一方。世界選手権代表の飯塚選手でさえ置き去りにされてしまいました。スタートからゴールまで一切乱れることのないフォームは山縣選手本来の走りでした。完全復活と言っていいと思います。
何度か動画を見ましたが、スタート飛び出しに関しては可もなく不可もなくと言った感じでした。もしかするとまだ足首に不安があるため全開の飛び出しではないのかもしれません。昨年の全日本実業団(10秒03で優勝)と比較して見ましたが、昨年はスタートの瞬間には身体一つリードを奪っています。反応速度も抜群でした。号砲の瞬間に観客の「はやっ」という感嘆の声が上がるほどです。そのリードを最後まで守り切ったというレースでした。今回は昨年のような鋭いスタートではなかった代わりに後半の伸びが素晴らしかったです。200m専門で後半型の飯塚選手が後半でさらに離されたように見えました。
もしかするとスタートを思いっきり出なかった事で後半に余力が残り、無駄がなく減速の少ない走りから後半にもうひと伸びする走りにパワーアップしたのかもしれません。桐生選手も脚に不安がありスタートは本気で蹴れない状態だったという事なので、同じように山縣選手もスタートに余裕を持たせた事で後半が良くなったということが考えられます。
反応速度に関してはレース勘が完全に戻れば昨年のようなフライングスレスレの飛び出しが出来るようになると思うし、足首が完治すれば余裕を持って且つ爆発的な加速が見られるかもしれません。(矛盾しているようですが、短距離走とは100%出力した時にトップスピードが出るというわけではありません。少し力を抜くことで最高の動きが出来て結果的に消費エネルギーも最小限に抑えられます。つまり爆発的なスタート+後半の伸びは不可能ではないということです)
風等の条件、足首の状態、反応速度と伸び代はまだ十分にありながらの10秒00ですから10月の国体で9秒代を期待せずには入られませんね。ただ寒くなってきますし、ここまで急ピッチで仕上げてきた疲労もあると思います。怪我だけはして欲しくないものです。
それにしても今年の100mの記録はヤバイです。桐生(9”98)、山縣(10秒00)、サニブラウウン(10”04)、多田(10秒07)、飯塚(10秒08)、ケンブリッジ(10秒08)。日本歴代10傑のタイムが1シーズンでこんなに出るなんて。しかも上位2人が日本選手権で負けるというレベルの高さ。今から来年が楽しみでなりません。
追記:山縣選手、軽い肉離れのため国体は欠場となりました。来季に向けて頑張って欲しいです。