スプリンターにとってアキレス腱の痛みは非常に厄介です。私の周りでも20代後半からアキレス腱に痛みを抱える選手が急速に増えてくるような印象があります。同世代(30代)で陸上続けている仲間は全員アキレス腱痛を体験済みです。
走り方の癖などは全員違うはずですが、皆同じようにアキレス腱痛に悩まされるようになるのです。私が思うにアキレス腱痛の発症は競技年数の長さと比例しています。私の周りで一人だけアキレス腱痛を発症しないまま30過ぎまで競技を続け引退した選手がいました。高校から陸上を始め、大学の4年間は陸上をしていませんでした。つまり年齢は私と同じでも開始が3年遅く、4年のブランクがあるので実質7年間は陸上競技暦が短いということになります。私は28歳の時に初めて走れなくなるほどのアキレス腱痛に見舞われましたが、この選手も35歳まで続けていたら発症したかもしれませんね。
世界陸上で2度メダルを獲得した為末さんの言葉で「腱は消耗品」というのがありましたが、正にその通りだと思います。為末さん自身も最後はアキレス腱痛との戦いでした。トップレベルでも一般レベルでもアキレス腱の故障に悩み、それが原因で引退する選手が数多くいます。私自身も慢性的な痛みでシーズンを棒に振ったり、途中で離脱したり、どうにかこうにかごまかして1シーズン乗り切ったりしています。今回はアキレス腱痛に関して私の経験を書いていこうと思います。今アキレス腱が痛い方はもちろん、長く競技を続けたい若手の方にも参考になれば幸いです。
アキレス腱は一度傷めると治りが悪く慢性化しやすいという特徴があります。しかも再発しやすい。なので痛みが出ないようにケアしていくことが一番大切です。走って痛みを感じた時には既にかなり深刻な状態ですから。
- まずは毎日確認
今アキレス腱に何の違和感もない方も、とりあえず毎日1回はアキレス腱をつまんでみましょう。圧痛があれば危険信号です。練習量を減らしてケアを開始して下さい。そのままトレーニングを継続すると運動時に痛みが出てきます。
- ふくらはぎ、足裏の筋肉を緩める
ケアの方法ですが、ふくらはぎと足裏の筋肉を緩めてあげて下さい。足裏は青竹踏みがお勧めです(イボイボ付の薄いやつより竹を半分に割ったアーチの高いやつが良いです)アキレス腱はふくらはぎと足底筋の中間にありますから、どちらかの筋肉が硬くなってくると引っ張られて負担が掛かかります。両方硬くなれば両側から引っ張られてアキレス腱にとって最悪の状態です。アキレス腱への負担を減らすためにふくらはぎと足裏の筋肉はしっかりケアしておいて下さい。
痛むのはアキレス腱でも原因はふくらはぎと足裏の硬化であるパターンはけっこう多いです。特に足裏は見過ごされがちです。何ヶ月もアキレス腱に軟膏を塗ってマッサージして低周波を当ても治らなかったのに青竹踏み3日で治ったという選手もいたのでアキレス腱だけをケアしても直らない場合はアキレス腱の周囲もしっかりとケアしてあげて下さい。
- とにかく休む
これは簡単なようでアスリートにとっては一番難しいと思います(痛みが出る前であれば特に)。ましてや若い選手であれば。私はアキレス腱をつまんで圧痛があったらその日から最低でも3日間は走りません。普段以上に上記のケアを行い圧痛がなくなってから走る練習を再開します。慎重過ぎる様に感じる方もおられると思いますが、何度もアキレス腱痛でシーズン終了した経験からこのルールは絶対に守るようにしています。
少し長くなるので数回に分けて次回もアキレス腱痛について書こうと思います。